[台詞] 鍵のかかった部屋

EP.02 元泥棒の弟による密室練炭自殺

美樹:あなたは、叔父さん(演:髙嶋政宏;美樹の義父)の友達なんですか?教えてください。叔父さんはどんな人なんですか?
榎本:高澤さんはどんな人ですか?
美樹:…え?
榎本:教育熱心で、ユーモアもあって、生徒からも父兄からも絶大な信頼を得ている、いわば、"教師の鑑"ですよね。それに比べて会田さん(演:中村獅童;美樹の実の兄)は、窃盗を繰り返した挙句に傷害事件を起こして刑務所に入った前科者、最低な男だ。
純子:ちょっと榎本さん、
榎本:……世間的には。会田さんがどんな人かは、あなたが自分で確かめた方が良いんじゃないですか?人の評価なんて…どうせ当てにならないから。

EP.04の予告
榎本:皆さん、見た目には騙されないでください。以上。
EP.05 OP
榎本:このドアに鍵はかかっていません。なのに何故開かないのか。それは、家全体が大きく歪んでいるからです。鍵のかかっていない密室というのは、ある意味とても厄介です。何故なら、鍵があればドアは開く、無ければ開かないというような、明確な判断基準が存在しないからです。それは、人の心理でも同じです。歪んでしまった心の中を理解しようとするのは、至難の業だと言えるでしょう。この厄介な謎を解くためには、そもそも、この家が何故こんなに歪んでしまったのか、そして、その歪みがどんな悲劇を引き起こしてしまったのか、まずは、それを話さなければなりません。
EP.11 最終回
榎本:僕の情報を警察に流したのは…あなたですね。
佐藤(椎名):何の話ですか。
榎本:あなたには感心しましたよ。密室の解明に、ここまで手こずったのは初めてです。でも、ようやく答えを見つけることが出来ました。
佐藤:申し訳ありませんが、何を言われているのかサッパリ分かりません。
榎本:では分かるように説明しましょう。
話は少しばかり複雑です。まず、あなたは窓拭きの最中に偶然、あるものを目撃しましたね。
佐藤:あるもの?なんですか?あるものって。
榎本:社長が部屋に隠し持っていた6億円相当のダイヤモンドですよ。あなたは何とかしてそれを盗めないかと考え、情報収集のために盗聴器を仕掛けることにした。
佐藤:仕掛けるって…一体どうやって?
榎本:清掃に訪れた際はいつも、屋上と内階段のドアを開けるマスターキーを警備員から渡されるんですよね。
佐藤:ええ。
榎本:清掃の時間はたっぷりあります。仲間の清掃員が作業をしている間にビルを抜け出し合鍵を作る事は十分に可能でしょう。その合鍵を使い、あなたは深夜に役員フロアに侵入したんです。監視カメラは夜間はセンサーで作動するアラーム録画設定になっていたため人体から発する赤外線をブロックする素材、例えばアルミで全身を包んでおけばセンサーをくぐり抜けることができます。そうしてあなたは盗聴器を仕掛け、時間をかけてさまざまな情報を集めていったんです。
佐藤:冗談でしょう。
榎本:残念ながら本気です。集めた情報というのが、例えば、社長が昼食後にコーヒーに砂糖入れて飲むこと、社長のコーヒーだけは専用の粉を使って入れられること、毎日必ず食後に仮眠をとること、そして、ダイヤがどこに隠されているのかということ。あの音を耳にすれば、隠し場所を推測するのは、それほど難しくはなかったでしょう。ついにダイヤを奪う時が来た、そう思った矢先に、不測の事態が起きました。社長が狙撃事件をでっちあげ、警備システムがさらに強化されることになってしまったからです。だから、僕がシステムの工事に取り掛かる前、つまり、事件前夜にダイヤを盗み出し、盗聴器を回収したんですね。

佐藤:学歴のない、いち清掃員がそんなに手の込んだことを思いつけると思いますか。もう終業時間なんで、帰らせてもらいます。
榎本:ダイヤを処分しに家に帰るんですか。あなたがここから出て行くなら、僕は警察に通報しなくてはなりません。あなたは逮捕され、アパートに家宅捜索が入ることになります。
佐藤:いい加減にしてください。何の証拠があってそんな…。
榎本:数100個のダイヤとなると、隠し場所は限られてくる。でも本当はどこかに埋めてしまうのが1番安全なんですが、そうはできないのが人間の性です。どんなに辺鄙な場所を選んでどんなに深く穴を掘っても誰かに見つけられるんじゃないかと思うと夜も眠れなくなる。だからどうしても手元におきたくなるんです。今あなたが恐れているのは、警察よりも、火事や泥棒でしょう。違いますか。
佐藤:あんた、どうかしてるんじゃないのか。
榎本:玄関脇の古い洗濯機の事ですが、あれだけ古いものだと盗まれる心配はありませんよね。ダイヤの包みを内槽と外槽の間に押し込めばまず見つかる事はないし、取り出すのも困難です。しかも洗濯物を入れ、水をためておけばカモフラージュと火災除けの一石二鳥になる。なかなかよく考えたと思いますよ。
佐藤:そんなのありかよ。家に勝手に入ったのか。
榎本:1つだけわからないことがあります。あのダイヤは社長が横領したものですから、たとえ盗まれたとしても公表することはできません。あなたも恐らく、それを察していたはずです。ではなぜ、大変な苦労してまで殺す必要があったのでしょうか。

佐藤:なんで殺す必要があったかって?教えてやろうか。俺の目的はダイヤなんかじゃない。最初からあいつを殺すこと、復讐することが目的だったんだ。
榎本:復讐?
佐藤:あいつは俺の親父を裏切った。共同経営が傾いた時、会社の金を持ち逃げして親父とお袋を死に追い込んだんだ。殺して何が悪い?
榎本:では、復讐計画の途中でダイヤを発見したと言う事ですね。
佐藤:あれは予想外の出来事だった。どうせ殺すならついでにあのダイヤももらっておこうと思ったんだ。そうすれば世界が変わる。新しい人生を始めることができる。ダイヤを手にすれば、ガラスの向こう側へ行ける。高級なスーツを着て磨き抜かれた革靴を履いて…金がなければとても手の届かないような良い女を口説くことだってできる。…君の事は調べさせてもらったよ。君にならわかるだろう。俺の気持ちが。

榎本:それでガラスは越えられたんですか。復讐を果たしダイヤを手に入れて、あなたは解放されたんですか。僕にはそうは見えません。

佐藤:君にはどう見える?

榎本:前後左右、それから上下まで、ガラスに囲まれているように見えます。僕はガラスの箱に閉じ込められるのはごめんです。たとえ向こう側に行けないとしても、自由でいたいんです。


青砥:あれからもう3日ですよ。榎本さんどこにいるんでしょうね。(電話音)はいもしもし!
榎本(電話越し):すいません。連絡が遅くなりました。
青砥:どうしたんですか!心配してたんですよ!
芹沢:榎本!?榎本か?!
榎本:ちょっと事情がありまして。
芹沢:榎本どこにいるんだ今!
榎本:空港です。
青砥:空港?え、旅行にでも行くんですか?

榎本:はい。臨時収入が入ったもので。

青砥:臨時収入?
芹沢:おい榎本!聞きたいことがあるんだ。
榎本:なんでしょうか。
芹沢:椎名あきらの部屋から押収された6億相当のダイヤのうち、約1億円分がホワイトジルコン、つまり偽物だったんだそうだ。
榎本:そうですか。
芹沢:お前まさか…
榎本:何のことでしょう。社長が行商に騙されたんじゃないですか。
青砥:あの、旅行ってどこに行くんですか。
榎本:さぁ。
青砥:いつ帰ってくるんですか。
榎本:さぁ。フライトの時間なのでもう行きます。
青砥:あっ、ちょ、ちょっと待ってください。
榎本:では。(電話が切れる音)
芹沢:なんだって?
青砥:…さぁ?
芹沢:はあ?


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